E・グレン・ワイル E. Glen Weyl
経済学者。本書の主要著者の一人。Microsoft Research「Plurality Technology Collaboratory」やPlurality Institute、RadicalxChangeの創設者。『ラディカル・マーケット』(ポズナーとの共著)。土地税・相利共生・社会市場など⿻の経済的基盤の理論的出典(5-7等で詳述)。
proper_noun / 登場章: 7
複数性(プルラリティ) Plurality
民主主義と協働技術の共生関係を表す、本書全体の中心概念。この章では「複数性」という訳語で導入される(注: 3-0章以降は「プルラリティ/多元性」表記に変わり、訳語がこの版内で揺れている)。
abstract_concept / 登場章: 29
數位 shuwei
中国語で「デジタル」と「複数」を同時に意味する語。複数性という発想の言語的な裏付けとして提示される。
instance / 登場章: 2
民主主義 democracy
abstract_concept / 登場章: 8
インターネット the internet
人々を結びつける力と、分断・タコツボ化を招く力の両方を持つ技術として両義的に提示される。
instance / 登場章: 4
Vデム研究所 V-Dem Institute
民主主義下/専制下の人口比データの出典(脚注)。
proper_noun / 登場章: 1
ダライ・ラマ14世 Dalai Lama XIV
章冒頭の引用元。本文の議論には直接接続しない。
proper_noun / 登場章: 1
狭い回廊 the narrow corridor
アセモグルとロビンソンの概念。自由な社会は社会崩壊(反社会)と専制(中央集権)の間の「狭い回廊」に置かれる。ITは両側からこれを狭めている。⿻の狙いはこの回廊を進み広げること。複雑性科学の『カオスの縁』に対応する。
abstract_concept / 登場章: 2
反社会(ITの脅威) the anti-social threat
ITが社会の仕組みを壊し意見を極端化・規範を潰し金融を暴走させる脅威(SNS・暗号資産など)。狭い回廊を『崩壊』側から狭める壁で、リバタリアニズムのカオスと結びつく。
abstract_concept / 登場章: 1
中央集権(ITの脅威) the centralization threat
ITが監視能力と権力を少数のエンジニア・企業・国家へ集中させる脅威(機械学習・基盤モデル・IoT)。狭い回廊を『専制』側から狭める壁で、テクノクラシーのAI志向と結びつく。反社会とは正反対の力。
abstract_concept / 登場章: 1
テックラッシュ techlash
2010年代後半以降の、世論と政策担当者による大手IT企業・IT支持者への反発。民主主義国がITへの敵意を強め、IT開発への公共投資を減らした潮流。
abstract_concept / 登場章: 1
デジタル民主主義 digital democracy
Civilization VIの第3イデオロギー。AIのテクノクラシーでも暗号のリバタリアニズムでもなく、ITと民主主義を協働させる道。インド・エストニア・台湾に萌芽し、⿻が体系化する政治的経路。
abstract_concept / 登場章: 8
知能拡張(IA) Intelligence Amplification (IA)
AIが人間を置換するのに対し、パソコン・インターネット・スマホのように人間の創造性を拡張する技術系譜。リックライダーの人間-コンピュータ共生に連なり、テクノクラシー/リバタリアニズムとは別の伝統。⿻が土台とする。
abstract_concept / 登場章: 1
デジタル停滞 the Digital Stagnation
黄金期の約半分に落ちた全要素生産性(TFP)成長と、上位1%に偏った格差拡大で特徴づけられる過去半世紀。技術の自動化偏重(テクノクラシー)と市場任せの政策(リバタリアニズム)がその二大要因とされる。
abstract_concept / 登場章: 1
ひまわり学生運動 Sunflower Movement
2014年、対中貿易協定に反発した学生が立法院を3週間以上占拠した運動。要求が合意として受け入れられ政権交代を促した。ここで開発された技術が台湾のデジタル民主主義の起点となり、著者オードリー・タンの入閣にもつながった。
proper_noun / 登場章: 2
三民主義 Three Principles of the People
孫文が提唱した中華民国の公式理念。民族(多元主義=五族共和)・民権(民主主義と五院の分権)・民生(土地権の平等・反独占・協同組合。ヘンリー・ジョージ思想を含む)。台湾の土地改革と合作事業の基盤。
abstract_concept / 登場章: 1
孫文(孫中山) Sun Yat-sen
中華民国の建国者。日本・キリスト教・アメリカの影響と儒教を踏まえ1905年に三民主義を定式化。国民党を建国した。
proper_noun / 登場章: 1
零時政府(g0v) g0v (gov-zero)
2012年に高嘉良ら市民ハッカーが創設した台湾の分散型シビックテック運動。政府サイトを『フォーク』し改良版を示して政府に『マージ』させる。オープンソース/現場主義/公共精神の交点。『あなたこそがその誰も』を標語に多数のプロジェクト(vTaiwan/Cofacts等)を生んだ。
proper_noun / 登場章: 3
vTaiwan vTaiwan
g0vが開発した公共政策の熟議プラットフォーム。提案→意見→反映→法制化のステップを持ち、Polis等のOSSツールを活用。ピーク時に人口約1%が参加、28問題を審議し8割が立法につながった。
proper_noun / 登場章: 2
Polis Polis
次元削減で意見をクラスター化し、対立を橋渡しする声明を強調表示するオープンソースのwikisurvey/熟議ツール。エンゲージメント最大化ではなく合意形成と分断線の理解を促す。5-4拡張熟議で詳述。
instance / 登場章: 2
クアドラティック投票 Quadratic Voting (QV)
支持の度合いを表明できる投票方式。強く支持する対象に票を集中でき、幅広い参加者が部分的な受賞者となれる。総統杯ハッカソンや資金配分(公益創新)で使用。5-6⿻投票で詳述。
instance / 登場章: 3
ハンナ・アーレント Hannah Arendt
「人間の条件」の著者。複数性の記述的要素の出典。
proper_noun / 登場章: 2
人間の条件 The Human Condition
ハンナ・アーレントの著作(1958)。複数性という語自体の出典。
proper_noun / 登場章: 1
ダニエル・アレン Danielle Allen
政治哲学者。「つながりのある社会」の提唱者。
proper_noun / 登場章: 3
つながりのある社会 A Connected Society
ダニエル・アレンが提唱した、差異を超えた橋渡しの絆が高頻度で形成される社会という理想。複数性の規範的要素の出典。
abstract_concept / 登場章: 4
オードリー・タン Audrey Tang
台湾初代デジタル発展大臣。2016年から「複数性/プルラリティ」を技術的アジェンダとして使用。
proper_noun / 登場章: 4
台湾 Taiwan
民主主義とITの緊張を克服した経験を持つ事例として言及される。
proper_noun / 登場章: 9
一元論的アトム主義 monist atomism
世界を個人(アトム)と社会全体だけで捉える見方。リバタリアニズムとテクノクラシーに共通する要素として名付けられ、複数性と明示的に対比される。
abstract_concept / 登場章: 3
リバタリアニズム Libertarianism
abstract_concept / 登場章: 7
テクノクラシー Technocracy
abstract_concept / 登場章: 6
スタートレック Star Trek
劇中のバルカン人が掲げる「無限の組み合わせにおける無限の多様性」という哲学が、複数性を先取りする例として引用される。
instance / 登場章: 1
複雑性の科学 complexity science
20世紀の自然科学が一元論的アトム主義を超えて到達した、複雑性・創発・多層組織・多方向の因果に注目する見方。数学・物理・生物・神経科学に共通し、⿻が人間社会と情報技術へ応用する科学的基盤となる。
abstract_concept / 登場章: 3
カオスの縁 edge of chaos
複雑系が混沌と秩序の臨界値近傍で、生命のような複雑構造を生む状態。⿻はこの領域(2-0の「狭い回廊」に対応)へ自ら向かい広げる「自己組織化臨界性」を科学から学ぶ。
abstract_concept / 登場章: 3
マーク・グラノヴェッター Mark Granovetter
ネットワーク社会学の主導的人物。個人のアイデンティティは社会関係とのつながりから生まれるという、⿻社会科学の中核的な見方の出典。
proper_noun / 登場章: 1
メタサイエンス metascience
科学者とアイデアのネットワークから科学的知識が複雑系として生まれる様子を研究する学際分野。⿻を科学の営み自体に適用した実例で、分散型コミュニティほど信頼性の高い知識を生むことなどを示す。
instance / 登場章: 1
ヘンリー・ジョージ Henry George
『進歩と貧困』の経済学者。土地の価値は集団が生む産物で個人に帰属しないとする「ネットワーク化された価値」観と土地単一税を提唱。⿻社会科学の(財産/価値面での)創始者。5-7社会市場へ発展。
proper_noun / 登場章: 4
ゲオルク・ジンメル Georg Simmel
20世紀初頭の社会学者。個人のアイデンティティは複数の社会サークルの交差から創発するという「交差的(非)個人」論を提唱。ソーシャルネットワーク概念の先駆(誤訳経由で「網の目/ウェブ」が普及)。
proper_noun / 登場章: 3
ジョン・デューイ John Dewey
アメリカ民主主義の哲学者。『公衆とその諸問題』で、技術が生む新たな相互依存に影響される人々=「関係した公衆」が課題を管理するのが真の民主主義だと論じた(創発的公衆論)。
proper_noun / 登場章: 3
ノーバート・ウィーナー Norbert Wiener
「サイバネティックス」の創始者。⿻的な社会組織の理解を科学的エンジンに変えようとしたが、量子物理由来の精度の限界を理由に社会科学の実行可能性には懐疑的だった。
proper_noun / 登場章: 2
サイバネティックス cybernetics
ネットワークに対する/による/のためのコミュニケーションと統括の科学(ウィーナー)。「サイバー」「計算機科学」の語源。動物や機械のような複雑系の制御と通信を扱う。
abstract_concept / 登場章: 2
創発的公衆 emergent public
技術が生む新たな相互依存によって実際に生活が左右される人々の集合体。既存の政治的境界と一致せず絶えず出現するため、真の民主主義はそれに合わせ統治範囲を作り直し続ける必要がある(デューイ)。
abstract_concept / 登場章: 2
J・C・R・リックライダー J. C. R. Licklider
心理音響学者。ARPA/IPTOを率い「人間とコンピュータの共生」を提唱、銀河間計算機ネットワークを構想してインターネットの基盤を築いた。1979年「コンピュータと政府」で監視・独占などの悪シナリオを予見(2-0のテックラッシュと符合)。
proper_noun / 登場章: 8
パケット交換 packet switching
集中型交換機に代わる分散型通信方式(バラン/デイビス)。障害に強く動的に迂回経路をとる。中央集権に代えて⿻的な非集中構造をインターネットに与えた3つのレイヤーの1つ。
instance / 登場章: 2
ハイパーテキスト hypertext
原作者の直線的解釈から解放し、双方向リンク網で素材を通る経路の「多元主義」を強化する仕組み(ネルソン/エンゲルバート)。バーナーズ=リーのWWWの中核。3レイヤーの1つ。
instance / 登場章: 1
オープン標準設定プロセス open standard-setting process
政府・企業のトップダウンに代わる、地理・セクターに分散した協力者による開かれた標準設定(RFC等、wiki的で付加的)。多様なローカルネットを相互運用させ「ネットワークのネットワーク」=インターネットの名の由来となる。
abstract_concept / 登場章: 1
失われた道 the lost Dao
新自由主義とベトナム反戦で公共・社会部門の投資が撤退し、ID・プライバシー・決済・資産共有などインターネットの中核レイヤーが統合されず民間に埋められた道筋。本章の主題で、⿻はこの道の再発見を目指す。
abstract_concept / 登場章: 1
オープンソースソフトウェア open-source software (OSS)
参加型・国境を越えた自己ガバナンスで共有資源を創発的に共同構築する実践(Linux/git/GitHub、ストールマン/トーバルズ)。⿻が支援するオープン協働精神を保つお手本で、本書で事例が多用される。
instance / 登場章: 9
Wikipedia Wikipedia
大規模でオープンな協働自己統治により、情報の断片化に抗して共通理解の源となった非営利プロジェクト(ワード・カニンガムのwiki概念から)。散在する「光のノード」の代表例。
instance / 登場章: 3
Web3 Web3
暗号とブロックチェーンで来歴と価値の共通理解を作ろうとする運動(サトシのビットコイン、ブテリンのイーサリアム)。多くはリバタリアン的だが、GitCoinや分散型IDなどインターネット本来の指向との連続性も強調される。
instance / 登場章: 7
なめらかな社会 smooth society
テクノロジーで「膜と核」の構造を解き、人が複雑性を活かして生きるネットワーク的社会のビジョン(鈴木健『なめらかな社会とその敵』)。個人を「分人(dividual)」として複数コミュニティへ同時帰属させ、PICSYや分人民主主義を伴う。安野貴博ら日本のデジタル民主主義に影響。
abstract_concept / 登場章: 1
カイゼン/PDCAサイクル Kaizen / PDCA cycle
検査による不良品淘汰でなく、生産ループ自体を統計的に管理し改善を繰り返す総合的プロセス(デミングの品質管理、トヨタで発展)。ウィーナーのサイバネティックなフィードバックループを産業で実証した具体例。
instance / 登場章: 1
⿻基盤(権利とOS) rights and the operating system
民主主義の基盤である『権利』と、アプリの基盤である『OS』をシームレスに組み合わせた⿻社会のインフラ観。ダイナミズム(絶えず適応する)と関係性(個人だけでなく交差する集団を保護)を核とし、権利/OSを固定・普遍と見るリバタリアニズムや、負担と見るテクノクラシーと対比される。
abstract_concept / 登場章: 2
ハイパーグラフ hypergraph
社会を『ノード(人)』と『エッジ(色を塗った集団)』で表す数学モデル。双方向関係だけでなく集団を許容し、各集団の重み・方向・共有デジタル資産を表現する。⿻社会をデジタルに表象する形式的基盤。第4部の各プロトコルはこの上に定義される。
abstract_concept / 登場章: 1
デジタル公共インフラ Digital Public Infrastructure (DPI)
ID・決済・データ共有などインターネットの『失われたレイヤー』を公共財として整備する取り組み。インドのIndia Stackが代表例。⿻の権利/OS基盤を実際に築く具体的投資。
instance / 登場章: 5
交差的ID(⿻ID) intersectional identity
生体認証のような身体情報ではなく、他者や社会集団と共有した歴史・交流(社会計量学)に基づいて身元を確立・保護する⿻的IDのアプローチ。冗長性・段階的認証・ソーシャル/コミュニティリカバリで単一障害点を避け、確立と保護のジレンマを調和させる。多極性と推移的信頼で実装。
abstract_concept / 登場章: 6
人物性の証明 proof of personhood
偽の資格証を量産して投票等を捕獲する金権政治化を防ぐため、一意の人間であることを確立する課題。IDが匿名すぎると資源を持つ者に捕獲され、確立しすぎると監視やプライバシー侵害になるトレードオフを抱える。
abstract_concept / 登場章: 1
文脈の完全性 contextual integrity
プライバシー研究者ヘレン・ニッセンバウムの概念。プライバシーとは秘匿ではなく、情報が意図された社会的文脈にとどまること。⿻IDが自然な社会活動由来の情報を検証に使う際に守るべき規範で、結社の自由(4-2)につながる。
abstract_concept / 登場章: 3
Aadhaar Aadhaar
インドのIndia Stackが支援する生体認証(虹彩・指紋)に基づく統一ID。人口の99%以上を登録した一方、集中的で単一のバイオメトリクスに紐付くため大規模監視や脆弱集団の標的化、単一障害点のリスクを抱える。
instance / 登場章: 1
共有知識 common knowledge
全員が知っているだけでなく『全員が知っていることを全員が知っている…』が無限に続く状態(ゲーム理論)。リスクのある集団行動の協調に不可欠で、公然の宣言(みんなの前の子供の笑い)が生む。団体=共有信念と目標を持つ集団の基盤。
abstract_concept / 登場章: 1
結社の自由 freedom of association
共有信念と目標をつくる自由。⿻では団体は個人と同じく社会構造の基本単位で、暴君の天敵(トクヴィル)。確立には共有知識の実現が、保護には外部監視と内部の過剰共有からの防御が要る。人格の完全性(4-1)と不可分。
abstract_concept / 登場章: 2
⿻公衆 plural publics
『公開』か『プライバシー』かの一次元を超え、外部から遮断された強い内部共有信念を持つ多様なコミュニティが共存できる情報標準。集中した共通理解⇔拡散した利用可能性という第二の軸を捉え、『コンテキストの信頼性』を維持する。
abstract_concept / 登場章: 2
プライバシー強化技術(PET) privacy-enhancing technologies (PETs)
公開鍵暗号を基盤に、ゼロ知識証明(ZKP)・セキュアマルチパーティ計算・準同型暗号・差分プライバシー・連合学習・指定検証者証明などで情報の文脈を保護する技術群。外部監視だけでなく内部の過剰共有からの保護にも応用されうる。
instance / 登場章: 3
⿻マネー(コミュニティ通貨) plural money
誰もが同じものに価値を帰属させる普遍通貨の集中性に対し、各コミュニティが限られた領域で使う通貨を持つ多極型、あるいは個人間の負債・信頼(恩恵)をmaxflowで直接扱う分散型のマネー観。いいね・引用・中心性など多様な社会的通貨を協力の基盤とする。本書自身もコミュニティ通貨で貢献を測った。
abstract_concept / 登場章: 1
スーパーモジュラリティ supermodularity
人や資産を組み合わせると個別の合計より多く生産される性質(全体>部分の和、収穫逓増)。消費が社会的で生産がスーパーモジュラーな場合、貨幣は価値の追跡手段として役立たず、投票に近い集合的決定が要る。
abstract_concept / 登場章: 4
イーサリアム Ethereum
ヴィタリック・ブテリンが、多様なコミュニティ通貨など社会的実験のプラットフォームとして構想した、最大のスマートコントラクト基盤。Web3の中核。
instance / 登場章: 2
⿻財産(データコラボレーション) plural property / data collaboration
ストレージ・計算・データなどデジタル資産を、権利(usus/abusus/fructus)の分解と集団的ガバナンスで安全に共有する⿻的な財産観。データは本質的に社会的・交差的で個人の権利に還元できず、契約は必然的に不完備なため、規範・法的先例・技術標準の共進化を要する。電波周波数帯やドメイン名など実物財産の再設計にも及ぶ。
abstract_concept / 登場章: 2
スマートコントラクト smart contract
合意内容を自己執行するデジタル契約。データコラボレーションの取り決めを実装しうるが、契約の不完備性ゆえに慣習的期待・規範の安定した社会的理解と組み合わせる必要がある。
instance / 登場章: 1
個人データの仲介者(MID・データ信託) data intermediary (MID / data trust)
『データ主体』の権利と利益を集団的に代表する組織(データ信託・協同組合・データ協働組織・グレン・ワイルのMID)。個人ではデータ共有の影響把握や巨大企業との団体交渉が困難なため、信託管理者として機能する。一方的な過剰開示を防ぐ規範を伴う。
instance / 登場章: 1
アクセス権 the right to access
文脈的に完全な情報へ誰もが平等にアクセスできること。単なる技術的可用性ではなく正真性を伴うアクセスを基本的人権とする。デジタル格差(都市/農村)の橋渡しとデジタル公共インフラ投資を要し、デジタル民主主義と社会的包摂の基礎となる。
abstract_concept / 登場章: 1
情報の完全性 information integrity
改ざんされていない共通の入力データへのアクセスと、模倣モデル(ディープフェイク)への対処・セマンティックセキュリティの維持。一部の人だけが改ざん版を受け取る状態は無アクセスより有害で、視点の多様性が⿻に貢献する前提を崩す。
abstract_concept / 登場章: 1
多様性をまたがるコラボレーション collaboration across diversity
ITで社会的差異をまたがるスーパーモジュラリティを強化すること。第5部の協働テクノロジーの中心目標。紛争の潜在エネルギーを有用な仕事に変えるエンジンで、宗教・地理・職業・民族・世代・種など無数の多様性の交差を橋渡しする。信念や目標より、連帯/愛着と文化(意味づけ)の差が最も埋めにくい。
abstract_concept / 登場章: 7
深さと広さのトレードオフ depth-breadth tradeoff
コラボの深さ(決まった参加者に対するスーパーモジュラリティ/帯域幅)と広さ(社会的・文化的距離を越えた包摂)の間の緊張。生産可能性フロンティア(PPF)として表され、コミュニティ/国家/商品の3類型に大別される。⿻の目標はこのフロンティアを外側へ押し広げること。
abstract_concept / 登場章: 5
多様性の再生 regenerating diversity
多様性を橋渡しして活用すると差異が薄れ、将来の生産的な多様性が枯渇しうる。エネルギー源の再生と同様、橋渡しの過程で新しい社会的差異を創出し多様性を補充する必要。学際の出合いが行動経済学やデータサイエンスを生むように、橋渡しは均質化だけでなく新分野の創出もしうる。
abstract_concept / 登場章: 3
ポスト表象コミュニケーション post-symbolic communication
言語や記号の文化的境界・主観的解釈の限界を超え、神経インターフェース・媒介現実・GFM等で思考や感情・感覚体験を直接共有するコミュニケーション(ラニアーの造語、タコの体色変化に着想)。踊り・音楽・母子の心拍同期・匂いに萌芽。深さ(帯域幅)の極を押し広げるが、個性の均質化リスクを伴う。
abstract_concept / 登場章: 3
ジャロン・ラニアー Jaron Lanier
仮想現実(VR)の先駆者。ミンスキーの弟子で批判者。人間の経験と共感を中心に据えた技術を志向し、ポスト表象コミュニケーションを提唱。個人データの仲介者(MID)の共同提案者でもあり、インターネットの欠陥へのネルソンの批判を支持した。
proper_noun / 登場章: 1
没入型共有現実(ISR) Immersive Shared Reality (ISR)
VR/AR/MR(スティーブ・マンの『媒介現実』の応用)で、価値重視の多感覚的な共有体験をどこででも提供し連帯とコミュニティ感覚を育てる技術。触覚・嗅覚・味覚の統合やアクセシビリティ、気候問題への共感喚起(Tree/Portals)に及ぶ。逃避や現実軽視のリスクには参加型統治の埋め込みで対処。
instance / 登場章: 4
クリエイティブコラボレーション creative collaboration
音楽・視覚芸術・演劇・料理などの芸術表現による共有文化形成を、デジタルツール(GitHub/Wikipedia/Googleドキュメント/Discord等)で地理・専門・観客の境界を越えて拡張する共創。ヴェスヴィオチャレンジやNetflix Prizeのように多様なチーム/手法の組合せが鍵。ジェネレーティブアートや異文化融合に及ぶ。
instance / 登場章: 1
エイリアン知性 alien intelligence
GFMが人間の発想を模倣するだけでなく、人間が見つけそうにない方向へ思考を導く性質(AlphaGo Zeroの意表を突く『エイリアン』戦略が典型)。多様性をまたがるコラボレーションの新しい素材を生み、囲碁の斬新化のように人間の創造を刺激しうる。
abstract_concept / 登場章: 1
拡張熟議 augmented deliberation
対面会話の豊かさと書き言葉の到達範囲を、デジタル技術とGFMで結び、多様な視点を増幅・接続する会話の強化。多様性と帯域幅のトレードオフや『ブロードリスニング』の困難に取り組む。vTaiwan/Cortico/Talk to the City、安野貴博の都知事選が実例。合意形成だけでなく生産的対立の再生も担う。
abstract_concept / 登場章: 3
橋渡しシステム bridging systems
エンゲージメント最大化ではなく、分断の異なる側から共に支持される(橋渡しする)コンテンツを優先するアルゴリズム。多様性をまたがるコラボレーションの原則を実装。合意点の可視化と、生産的な新しい対立の生成の両方に使える。
abstract_concept / 登場章: 2
ブロードリスニング broad listening
多数へ一つの発言を届ける『ブロードキャスト』の対に、ひとりが多様な視点を思慮深く消化すること。注意の認知的限界(『情報の豊かさは注意の貧困を生む』)ゆえ高コストだったが、GFMで拡張しうる。
abstract_concept / 登場章: 1
コミュニティノート Community Notes
X(旧Twitter)のコミュニティ型ファクトチェック。評価者を意見スペクトル上に配置し、偏った集団ではなく多様な集団が共に支持するノートに報酬を与える。毎週数億人が目にする橋渡しシステムの最大規模の実例。
instance / 登場章: 1
適応型管理行政 adaptive administration
官僚制の『硬直性』(詳細を捨てる)と『複雑性/ややこしさ』(過剰な裁量・不可解)というトレードオフを、GFM等で緩和し、多様な人々が自分の生活様式を尊重されつつ行政システムで協力できるようにすること。疎外層の公共サービス接続、法的支援、先住民の地図作成、文化規範の翻訳に及ぶ。
abstract_concept / 登場章: 1
生成基盤モデル(GFM) Generative Foundation Model (GFM)
数十億〜数兆のノードが結合し、例から確率的に分類・予測・推論を学ぶニューラルネットワーク(GOFAIの決定木とは対照的)。多様で曖昧な入力に適応でき、翻訳・熟議要約・行政・創作など本書の多くのツールの基盤。力は『AI』であることではなくネットワーク化された確率的構造から生じる。偏見の継承や不透明性のリスクも。
instance / 登場章: 4
次世代バッジ next-generation badging
ダニエル・アレンらが提案する、学校の課程と成績を多様なバッジ(マイクロ→メゾ→マクロ)へ段階的に置き換える資格制度。低レベル入力の組合せが高レベル出力を生むニューラルネットの構造を応用し、細分化した技能や疎外された学習者に対応する。
instance / 登場章: 2
逓減比例 degressive proportionality
利害関係の大きさの平方根に比例して票の重みを増やす原則(ペンローズの平方根投票)。無相関な信号は数の平方根で増えるが相関信号は数に正比例するため、独立1万票は相関100票に等しい。クアドラティック投票の数学的基盤で、加重投票と単純投票の幾何学的妥協。
abstract_concept / 登場章: 2
液体民主主義 liquid democracy
各投票者が票を他者に委任でき、委任先がさらに再委任できることで、ボトムアップの創発的な代表パターンを作る仕組み(ドジソン=ルイス・キャロルに遡る)。DAOやアイスランド等で普及するが権力が少数に集中しやすく、逓減比例と組み合わせて緩和する(クアドラティック液体民主主義)。
abstract_concept / 登場章: 1
社会市場 social markets
グローバル資本主義のダイナミズムと広い到達範囲を保ちつつ、収穫逓増/公共財の過少供給・市場支配力・外部性・分配という限界を⿻的に克服する市場の再設計。市場を消すのではなく、他の協働様式と交差させつつ隔離し、豊かな人間関係の背景に溶け込むほど柔軟な市場を目指す。
abstract_concept / 登場章: 2
クアドラティック資金調達(⿻資金調達) Quadratic Funding / plural funding
行政の限られた知識に頼らず公共/スーパーモジュラー財に資金を出す方式。マッチング資金を、個々の寄付額の平方根の和の二乗に比例して配分し、少数の大口より多数の小口(社会的距離を超えた多様な支持)を重視する。Gitcoin Grantsが実装しOSS等に1億ドル超を調達。⿻グループの所属も考慮する拡張版がある。
instance / 登場章: 2
メカニズムデザイン mechanism design
望ましい社会的結果を生むよう制度・市場のルールを設計する経済学のサブ分野(ヴィックリーが先駆)。社会市場の諸手法(部分的共通所有権・クアドラティック資金調達・マーケットデザイン)の理論的土台。
abstract_concept / 登場章: 1
部分的共通所有権 partial common ownership
所有者に財産価値を自己評価させ、その額での売却に応じる義務を課す制度(孫文やハーバーガーが提案)。正直な評価を促し、過少利用・独占された資産の循環を促す。ブロックチェーンのレジストリやNFTアート、台湾の土地税で実装。
abstract_concept / 登場章: 1
⿻変化の理論(⿻マーケティング) plural theory of change / plural marketing
⿻技術を広めるための戦略。既存の社会的分断をほぼバランスよく橋渡しする、多様で安全・権威あるコミュニティに『シード』を植える。世界人口の平方根(約10万人)規模のユニットが最も肥沃な土壌。アーレントの漸進的な権威構築(米国革命)型を範とし、暴力的な奪取(仏革命)型を避ける。本書自身の推薦依頼選定にも適用。
abstract_concept / 登場章: 7
コミュニティベースのイノベーション community-based innovation
コミュニティ『を実験台にする』RCT/ブリッツスケーリング型に対し、アーリーアダプターのコミュニティ『で実験する』参加型アプローチ(PAR)。事前指標より、技術がコミュニティに与える総合的影響で開発を駆動し、隣接コミュニティへ予期せぬ学びとともに広がる。初期のデジタル/⿻実験の手法。
abstract_concept / 登場章: 1
⿻の職場応用 plurality in the workplace
職場への⿻の応用。ISRで強力なリモートチーム構築と企業キャンパスの共同設計、拡張熟議で効率的で包摂的な会議、社会ID/GFMで⿻採用と『叡智と影響力の整合』(問題別の複数階層)、⿻資金調達で社内起業を支援。世界GDPを約10%、成長率を年0.5pt引き上げうると試算。
instance / 登場章: 1
⿻の保健応用 plurality in health
保健への⿻の応用。健康を創発的・マルチスケール・埋め込み型の関係的なものと捉え、健康保険を社会市場の『⿻財』として再構想する『健康生産社会』。連帯コミュニティ(団体)が共有信念のもと健康を共同生産し、リスクのプールをスーパーモジュラリティとして扱う。健康寿命を20年延ばしうると試算。
instance / 登場章: 1
⿻のメディア応用 plurality in media
メディア/ジャーナリズムへの⿻の応用。ISRで社会的距離を超えた共感、市民共同ジャーナリズムとGFMで『本物のコミュニティの声』の翻訳・検証、橋渡しシステムで感情的党派化の逆転、PET/ZKPで情報源の機密性と⿻公衆の保護、⿻資金調達で持続可能な資金。メディアへの信頼を20世紀半ばの水準へ回復させうる。
instance / 登場章: 1
⿻の環境応用 plurality and the environment
環境への⿻の応用。『グリーンテクノロジー』以上に、自然を支配対象でなく協力相手・尊敬対象とみなし、データで強化した自然とのコミュニケーションを確立する。台湾のLASS/Civil IoTのような市民科学のデータ連合、水路への自然法人格付与、GFMを『ロラックス』として自然や未来世代を代表させる熟議に及ぶ。
instance / 登場章: 1
⿻の学習応用 plurality in learning
学習への⿻の応用。現在の学校教育の線形構造を覆し、多様で柔軟な生涯学習の道筋を可能にする。機械翻訳・共有現実・Wikipediaのような国境を越えたコミュニティで硬直した学習経路を補完し、次世代バッジで細分化した技能を認知。台湾の共創教育モデルや萌典/Moedictの共同カタログ作成が実例。
instance / 登場章: 1
⿻政策(新しい⿻秩序) plural policy / new plural order
公的資金(政府・慈善)がGDPの約1%(年約1兆ドル)をデジタル公共インフラに投じ、市民社会主導・民間補完の技術開発を強化・保護する政策プログラム。ARPA/IPTOと台湾モデルを更新し、国境を越えたデジタル省庁ネットワークとオープンプロトコルで『国際的ルールに基づく秩序』のOSを築く。独占禁止の目標を産業政策の手段で達成する。
abstract_concept / 登場章: 1
デジタル帝国 Digital Empires
アヌ・ブラッドフォードが描く3つの技術政策モデル。米国=民間主導の新自由主義的自由市場、中国=国家主導、EU=規制大国(ブリュッセル効果)。台湾/⿻政策はこの三者の哲学の交差から、より野心的な代替を組み立てる。
abstract_concept / 登場章: 1
デジタル省庁 digital ministries
軍事主導機関より参加的で先見的な目標設定フォーラムとなる政府機関(台湾デジタル省、ウクライナ、日本デジタル庁、EU)。国境を越えて相互にネットワークを組み、国家ベースのノードを接続する。イーサリアム等の国境なきコミュニティともほぼ対等に連携。
instance / 登場章: 1
⿻の動員(第三の道) plural mobilization
⿻をリバタリアニズムとテクノクラシーを超えた『第三の道』として掲げ、2030年までにAI/ブロックチェーン並みの技術的認知、グリーン運動並みの政治的認知を得ることを目標とする社会全体の動員。即時・中期・変革の3つの時間軸で、文化・政治・活動・ビジネス・技術・研究が相互に強化し合う好循環を作る。関与の度合いが異なる重なり合う人々の輪。
abstract_concept / 登場章: 1